11 Apr 2017神無月

オールドレンズのレンズ清掃と必要な道具紹介。無理のない範囲でオーバーホール・クリーニング

オールドレンズのレンズ清掃と必要な道具 紹介。無理のない範囲で無難にオーバーホール。

eBayで落札したレンズが、商品説明と違いレンズにカビや汚れが目立つ品でした。

最近問題がある商品が届いてなかったので「お、届いた、sellerに連絡だ。Thanks a lot!」
なんて愚かにもレンズ状態を見ずにfeedbackをしてしまったのと、安価なレンズを返品するのもコスパ(送料はこっち持ち)を考えると億劫で、少し考えた末、記事にもできそうだし久々にレンズ清掃をがっちりやってみることにしました!

このOrestonを題材にレンズ清掃の仕方や必要な道具などの解説いたします。


見えますかね〜
小さい糸の塊のようなやつ。完全にカビです。

レンズとメーカー紹介

Meyer-Optik Görlitz ORESTON 50mm F1.8

レンズの描写などについては街撮りの記事がありますのでこちらでどうぞ。

Meyer-opitikの手頃でそれなりに写るらしい評判のレンズ。
のちにPentacon銘柄で発売されていたりもする歴史の影響が色濃いレンズです。

本日の格致日新

↓ レンズ清掃までの分解について。絞りやヘリコイドはかなりの上級者向けなので
↓ レンズの拭き方
↓ 必要な道具

※説明に必要な写真を後から撮り足しているので、写り込んでるものの辻褄が合わない箇所もあるかもしれませんが、あくまで説明文章が軸で写真はイメージ写真ぐらいに思ってもらえたらと。

かなり大事な諸注意!!

まず、レンズ清掃は大変で、それなりに時間がかかります。
手軽なものではないことを理解してください。


中山自身、やっとレンズ清掃が少し出来るようになるまでに、

・結構いいレンズ1本絞り機巧破壊
・ジャンクレンズ2本直そうとしたが全く太刀打ちできず時間をかなり消費
・三千円ぐらいの簡素なレンズを3日ぐらいかけてオーバーホール
・その他軽めに清掃何本か清掃

ぐらいやって「簡素なオールドレンズのレンズ清掃なら出来るかな」程度です。
ですので決して最初に一番大事なレンズを分解したりしないように!

また、勢いで絞りやヘリコイドを分解してみたくなる気持ちもよくわかります。
正直、分解は簡単です。
がしかし、組み立ては非常に困難でまず戻せません。

オールドレンズは仕組みが簡素なせいか一個一個の部品の重要性が高く、位置や順番がとても大事です。
安易に分解すると戻せなくなり、途中で心が折れます(経験者)

それから今時のレンズも精密過ぎるので絶対に分解しないこと。今時のレンズは外側から拭けるレンズのみにしてください。

清掃に必要なところまでの分解

中山流、無理をしないレンズ清掃の必須事項は絞り機巧に触らないことです。ピントヘリコイドが簡素な作りならグリスを塗り直したいところですが無理はいけません。

問題はその境目の判断ですが、参考にしようとして検索で探しても、見つかるのは相当有名なレンズで、それでも案外世代違いで作りが違ったりして参考にならないことも多いかと。
なので結局はこの場の判断になってしまうかと。
そんな訳で今回のOrestonを題材にその辺の判断基準も書いていこうと思います。


さてOrestonを見回すとリア側のマイナスのビス3本が目につきました。


見た感じビスを外せば、被っているだけのカバーのように見えましたので外してみます。


簡単に外れました。
なお、外すときは何か噛み合わさっている箇所や、こぼれ落ちる部品に注意しながら外したほうがいいです。

複雑な筐体の場合イキナリここでバラバラといって終了の場合もあります。
複雑というより高いレンズと言ったほうがいいかも。
この複雑さと高価は比例してる気もします。


とりあえずこぼれ落ちた部品はなかったもよう。
少しついている機巧は絞りの操作系統です。
絞り羽根自体とは分離しており、これはシンプルな作りのほうです。


さて、このリア側のレンズの奥にカビがいるのでこのリアレンズは外さないと。

ただこの奥には、間違いなく絞り羽根がいるので外し方には気をつけないといけないところです。レンズと共に絞り羽根がバラバラと取れたりしたら、2日は絞り羽根と向き合う羽目になると思います。


レンズ付近を見回すと小さいネジが横から3箇所ついてることが分かりました。多分、これでリアレンズのセットを支えているのかと。
ただこう言ったネジは案外、無限遠の調整にもかかわっていたりするので必要に応じてマーキング等をしたほうがいい場合もあります。まあ今回のOrestonの雰囲気だと、無限遠とは関係ないかと。
ネジを外した瞬間に、レンズがストンと中に落ちる作りでないか確認しながら外します。

追記:170709
このレンズ部分は光軸の調整が必要なもので、気軽に触るべきでないものでした。
レンズ清掃例サンプルとして閲覧よろしくお願いいたします。


問題なく外れて、直ぐそこに絞り羽根が見えます。くわばらくわばら。

とは言え優しく綿棒などで触るぶんには案外大丈夫なので、少しの羽根汚れなどは拭いてもいいかと思います。今回の羽根は幸い綺麗です。

ちなみに絞りを動かす機巧はこんな感じです。

先ほど外した、リア部分と細い一本の棒でつながっているだけです。
機械好きはこういうのを触っているだけで楽しいです。


外したリアレンズのレンズ群にカビが見えます。こちらまだ分解できるので外します。


分解後はこんな感じで、レンズのみになっているほうが一番リア側の、実際に外に出ているレンズです。カニ目のリングで黒いほうの筐体に固定されてます。

白い紙はシルボン紙と言う、こういった用途専用の紙です。決してティッシュで代用してはいけません。ティッシュは、ほこり製造マシーンですので絶対に専用のシルボン紙を使いましょう。高価なものではありません。
シルボン紙などの必要な道具については後半にまとめて解説しています。

分解し過ぎない

今回のように、リア側のレンズ清掃はここまでの分解で済むので、他の部品はもう触らないほうがいいです。


今回、分かっていながら簡単に外れそうなので絞りのリングを外してみたら、ポロっと何かが落ちました。
簡単に見過ごすぐらいの小さな玉でした。


この小さな玉は、絞りリング内のこの部分に、やはりとても小さなバネとセットで絞りのひっかかり機巧をなしてました。


絞りリングの内側にはこんな感じの溝があり、このひとつずつで一段ずつの絞り機巧になるもよう。

今回は簡単な仕組みだったので直せましたが、これがめちゃくちゃ大変なはめ方だったり、部品が鏡筒内の変なところに落ちて、絞りを動かしたら挟まって絞りが壊れる(経験者)とか十分あり得ます。

ということで、自分で間違えておきながらなんですが、レンズ清掃に必要のないところは触らないようにしましょう。
鏡筒内の掃除をしたい場合は、部品は押さえつけて、軽い気持ちで外すのはやめましょう。

フロント側の分解

こちらはカニ目リングを中心に解説。


この両端に切り込みがあるような枠は、カニ目レンチを使用して外す場所で、このリングでレンズを抑える仕組みはどのメーカーのレンズもほぼ一緒です。

シンプルな仕組みで一見簡単に外れそうなんですが、ここがオールドレンズの手ごわいところで、経年の劣化等でリングが硬くて動かないこともしばしば。


なので、カニ目部分にレンチが入りやすいようにして、力を入れやすくする最大の努力が必要です。
今回は刻印がある上蓋がまるっと外れて、カニ目周辺のスペースがとても広く取ることができました。大変ありがたい。


そしてレンチを幅に合わせて、力が均等にかかるよう、滑って傷がつかないよう最新の注意を払って回します。

カニ目リングなどの必要な道具については後半にまとめて解説しています。


外すとこんな感じで、すぐそこに絞り羽根です。
経験上、この状態で不用意に動かさないほうがいいです。

どんな仕組みになってるとか、周辺を綺麗にしようとかで逆さにしたりするとバラバラと絞り羽根が落ちてくる(経験者)可能性があります。


フロントレンズはこんな感じ。
上手く撮れませんでしたが結構汚れてます。

レンズの清掃

さて掃除に取り掛かります。


ラスボス的なカビは当然ですが、全体的に汚れたレンズでしたので、全部を念入りに清掃します。

こまめにブロア


必ず作業前に埃を飛ばしてから作業します。

普通の部屋では10分もすればチリ・埃がレンズに乗っかりますので。
そのままで掃除をすると、そのチリをレンズに擦り付けてクリーニングマークとして傷がついてしまいます。こまめにブロアをかけましょう。


シルボン紙を巻いた割り箸に無水エタノールを染み込ませくるくるとレンズを回しながら拭いて行きます。
この辺の必要なもの等は後半に記載しています。


この作業は単純で、くるくるとレンズ側を回しながらひたすら拭くのみです。
汚れがひどかったので何回も掃除していたら塗装が剥げました。まだまだ未熟者です。


また、注意点としては、
・力を入れすぎない。
・内側から外側へ
・シルボン紙は一回ごとに交換
ぐらいの地味な作業です。
あと、カニ目とかの目印を目安に、今どのくらい回したか確認しながらレンズ回すといいです。
感覚で回していると案外、外側のほうが半分ぐらいしか回ってなかったりします(経験者)。

レンズ清掃実演

シルボン紙をレンズの下に敷いて、レンズを回すような吹き方がやりやすいと思います。

また、シルボン紙は一枚あたりとても安いので、チリがついてそれをつけたまま掃除して傷をつけてしまわないように一回ごとに交換しましょう。


レンズのみになったり、汚れがひどいものはシルボン紙でつけおき的な感じで、上下から無水エタノールで浸したシルボン紙を被せます。
色々試しましたが、この方法が一番手軽に全面清掃がしやすいかと。

汚れ落ち抜群な清掃液もあるようですが、成分等の把握が面倒で、中山はこの「無水エタノールつけ置き」に落ち着きました。


ただ注意点としてひとつ、下にビニールを敷きましょう。
テーブルの塗料等が禿げます。

シルボン紙の巻き方

巻く芯は、割り箸でなくてもなんでもいいです。割り箸は、木の引っ掛かりがあるので巻きやすい気はします。


シルボン紙にこのぐらいの角度で割り箸を持ってきます。


左上を内側に折って、


さらに、上から折りながら、軽く割り箸を回します。
使うのは先端だけので、先端だけは綺麗になるように巻けるといいです。


そのまま割り箸をクルクル回しながら、左手は下のほうへ動かしましょう。
手の油分やホコリが先端につかないようにするためです。


だいたいこんな感じになればOK。
間違いなく慣れの作業なので同じ紙で何回も練習しましょう。


そして最後に割り箸を少し引き隙間を作ります。
先端に少し遊び作って、先端を柔らかくする工程です。

この状態で前述のように無水エタノールをつけて拭きます。

道具紹介

精密ドライバー


ドライバーの小さいやつです。
筐体の内部はかなり小さいネジがほとんどなので普通サイズのドライバーではまず無理です。


百円ショップとかでも買えるかもしれませんが、レンズのネジがナメてしまったりしたら怖いので最低限これくらいの標準的価格のものがいいのではと思います。

結局一番使う1.2mmのはハイクラスを買いました。
安定感全然違います。

また、ネジ回しは「押す力7割、回す力3割」が基本です。
これだけで劇的にナメる率が減ります(経験者)

カニ目レンチ


筐体内のこういった部分を回す工具で、オールドレンズのレンズの固定はこの仕組みであることが多いです。


最も大事と思われる工具で、予算が許す限り品質のいいものをお勧めします。
手頃で安価のものは、軸が緩くて固定できなかったりして、レンズ側のカニ目リングが悲惨なことになる(経験者)可能性が高いです。

こちら、ちょっと高いんですが安定感がやはり値段と比例しています。

またカニ目もネジと同じように「押す力7割、回す力3割」が基本です。

更に一度動き出したリングが、何かに引っかかって止まったら必ず一度戻しましょう。
そのまま力任せに回すと嵌って取れなくなることがあります(経験者)

リングが止まった場合、一度戻したり進めたり何度も繰り返しつつ、ブロアーなどでゴミなどを取り除きましょう。
無理に回すと最悪全く動かなくこともあります(経験者)

無水エタノール


レンズ清掃液と言えばどうもコレ一択らしいです。
ドラッグストアなどでも売っているそうですが、似たような名前のものが多いようなのでお間違えないようにどうぞ。

無水エタノール入れ「ハンドラップ」


あるところにはあるんだなあと言った感じの便利な工具。「ハンドラップ」というらしいです。
無水エタノールを入れて、上部の皿みたいなのを押すと少し中身が出てくる仕組みです。


ビー玉はかさ上げです。
無水エタノールの揮発性が高いので、あまりビンに入れないようにする工夫です。

シルボン紙


ティッシュペーパーではありません。
レンズ清掃のようなホコリを嫌う作業向きの紙で、拭いてる途中で紙からチリが出にくいです。
やはりこれもオールドレンズ清掃紙と言えばコレ一択のようです。

ブロアー

個別写真を撮ってませんでした、無水エタノールと一緒ですいません

カメラ好きな方はすでに持っているかとも思いますが、レンズ清掃をするならこのくらいの風圧が出るものが望ましいです。風圧の違いは作業効率も飛ばせる埃の強度も全然違います。

以前小さいブロアを持っていたのですが、こちらを買って速攻捨てました。全然違います。今まで根性でホコリを飛ばしてたのがバカらしかったです。

LEDライト


レンズのホコリ等を見つけやすくする指向性が強いライトです。レンズの反対から照らすと見やすいですが、目に入らないよう注意が必要です。かなり光量強いです。
あくまで汚れの場所の確認用で、常用にすると、見えすぎてしまって使える基準のレンズがなくなるほど汚れがよく見えます。

自分のは100円ショップで買った気がします。Amazonの購入履歴にはありませんでした。

吸盤オープナー


主にレンズのフロント側のカバーや蓋を回すのに使う、カニ目リングやネジ式でない部分の解体用のゴムです。


バラして回したい枠に合うものを選ぶ感じです。
これも案外必需品です。

ピンセット


ピンセットは出来ればあったほうがいいです。
特にネジが内部に落ちた時など、こちらでとったほうが無難です。
不用意に筐体を振ったりすると、バラバラと部品が外れて(経験者)、何処に何がついていたかわからなくなることがあります。


出来れば先が鋭利でないほうがいいかもしれません。

洗浄液


最近買ったTessarのフロント側の汚れがひどく、無水エタノールつけおきも全然効かないので、再度ネットを探してみましたがこちらの評判がよく購入しました。
確かによく落ちますし、使い勝手もいい質感です。

クリーニングペーパー


レビューの評判が良く手頃だったので試してみましたが、とてもいい感じです。


前述の洗浄液のFUJIFILMレンズクリーニングリキッドと合わせるととてもいい感じです。
洗浄液が油膜のように残ってしまうレンズがあったんですが、洗浄液が乾く前にすぐクリーニングペーパーで乾拭きするとすごく綺麗になりました。

作業撮影用、小型iPhoneスタンド


各パーツを分解する前に、位置やパーツの箇所の確認用にざっくり映像を撮ってます。
手でも撮れますが、いちいちiPhoneを持ち上げて操作が面倒だったんで試してみたらバッチリです。


現在10円なんですが、買った時は25円でした。
よく考えると、少し前に流行ったAmazonサギだったかもしれませんが普通に届きました。
また、Amazonのレビューを見ると1分で壊れた人が多数のようですが、中山が買ったものは今の所大丈夫です。100円ショップにもありそうですが、ダメもとでもOKな方にお勧めします。

油取り・洗浄液


グリスや油分が表面にベタベタして気になりませんか?
中山は非常に気になります。そこでベンジンです。


こういった昔からある薬品系って名前は聞いたことがあっても用途は全然知りませんでしたが、服のえり・袖の皮脂汚れ落とし(正確にはAベンジン、リグロインとかいって純度の高いもののようです)とかにも使うみたいです。
そういえば子どもの頃、実家のミシンの脇にこういったものがいくつかあった気がします。

ビニール手袋


上記ベンジンや、ヘリコイドにグリスを塗った時など、素手だと手に悪い気がしていたのでグローブを試したら思いの外よくまとめ買いしました。


素手よりは多少作業しづらいですが、全然、グリスのベタベタなんかに比べたら全然いい状態です。

まとめ

くれぐれも、いいレンズ・お気に入りのレンズをいきなり分解はダメです。

気に入っているいいレンズほど綺麗にしたいでしょうが、それはだいぶ清掃に慣れるまで我慢しましょう。
ちょっと気を抜いただけでも傷がついてしまうデリケートなものですので。

とは言え、オールドレンズというニッチな世界を堪能するのに中身も知って簡単にでもリペアができると、レンズ沼人生がさらに楽しくなるのだけは間違いないかと思います。

補足

きれいになったOrestonで街撮りをしました。
安価でよく写るレンズに加えてOK!Orestonと三軒茶屋を街歩き
いい感じで写ります!

お知らせ

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