2017 / 01 / 15
ジュピター9 / Jupiter-9 85mmのポートレート 扱いやすいボケと自然なハレーションが作るフィルム感
85mmとポートレートに適した画角な上、F2.0から使える明るさとボケ、撮影最短距離は115mと少し長いですが、青白っぽく起こるハレーションとボケと相まって独特のオールド感が、人物との距離感を引き立たせる素晴らしいレンズです。
レンズとメーカー紹介
Jupiter-9 85mm/F2.0 M42 1975年
Carl Zeiss のSonnarがもとになっているというJupiter-9。
ポートレートに超オススメです!
今回はそのポートレートを軸に掲載します。
本日のアジェンダ
・だいぶ慣れて来たオールドレンズでポートレートを前提として書いてみる。
・Jupiter9の得意なところや味を人肌の描写にどれだけ活かせるか試す。
ボケ味を軸に
Jupiter-9の柔らかいボケと、細めの線は、ソフトなポートレートに最適かと。
ボケは柔らかいだけではなく、溶けきらないと言うか、風合いは残るというか。
少しフィルムのような質感が、今時のレンズと少し違う味わいで楽しさかと思います。
顔を少し切りながらのバストアップぐらいの距離感なら、顔全体にピンが合いながら、体は少しボケがかかるF4〜F5ぐらいが最適ではと。
座った姿勢で、腕が顔に絡むと体は奥になりやすいのでボケた上に、腕のラインと目までのラインや顔の輪郭など線が、フレーム内に行き来してバランスが取りやすい気がします。
こちらは、やはりF4〜F5ぐらいですが、今度は少し距離をとった上、奥行きが長い場所にしています。
逆光をがっちり入る太陽の位置だったので、ほぼ吹き飛んでしまっていますが、体に回り込む光はちょうどいいあたりに持ってこれたのではと。
ちょっとシャドーが強く出てしまいましたが、手をつく壁と左腕、後ろの柵のラインを、斜めになった顔のラインから落ちる髪の強さが好きな感じです。
髪にもっと光が入れば面白かったかもです。
少し絞りを開いて余白を意識した撮り方に変更。
ここでJupiter9らしい面白さが出ました。
日が陰ったので完全に開放絞り、ホワイトバランスを曇りにしたら、ロシアンホワイトの飽和感一気に現れました。
ノーフィルターでこの感じはオールドならではかと。
それもロシア系レンズに見るハレーションのいい味かと思います。個人的にロシアンホワイトと呼んでます。
日が戻ったので、ホワイトバランスを戻し、少し寄ったのも考慮して絞りもF3付近ぐらいにしたかと。
下半身にかけてのボケ具合とてもいい感じです。
ヘアメイクさんのアイディアの結集でいい絵できました。
この一連は髪のあたりをぼかして、顔とドライフラワーが前に出てくるように撮りたかったので、ちょこちょこ絞りをいじっていますが、概ねF5あたりになったかと。
距離感と遠近感と割合がなかなか収まらず、結構枚数を撮ったんですが、思ったよりよく撮れてるものが多かった印象です。
カメラのモニター(今回は5DmarkⅢ)は、参考程度に考えないといけないとつくづく思うショットでした。
線の描写、色味
顔と身体の距離感がこのぐらいまで近づいたら、もっと絞ってもいいのかもです。
F8ぐらいでもよさそうです。
線が細めなのでJupiter-9ですが、多少絞ってもぜんぜん柔らかいイメージですので、パキっとはしない気がします。
いい意味でです。
コントラストは5DのCanon色なイメージです。
α7Rawだともう少し浅く出る気がします。
また、この辺は窓際で自然光で撮ったせいもあり、全体的に柔らかいでしょうか。
このぐらいが一番いいフレームかと。
左からの光で顔に出てる光の筋が、絞り具合とちょうどいいバランスになった上に、腕のハイライトと顔の影の部分が絶妙にうまくいった気がします。
色味、フレア、ゴースト
白の具合、肌の表現、日差しの兼ね合い
ボケ味のところにも書いたこの辺のショットのハレ具合は、ほんとロシアンレンズっぽいです。
Helios-44 58mmやMir-1 37mm に見られる感じと似ています。
開放に近くなると一気にレンズの中に光が回るんでしょうか。
ちょっと絞った時と明らかに変わります。
とはいえ、それだけでなく、繊細な線ながらもきちんと描写が残るので、光の影響で多少カラーバランスが崩れたとしてもきっちり写る、優れものかと。
少し足りない写真の反省、分析
準広角で寄ったものも試して見たかったので、グッとZeiss の銘玉 Flektogon 35mmで寄りも試しました。
広角で寄った時に気になる、顔の歪みはうまく外せたかと思いますが、ちょっとぼかし過ぎでうるさく感じます。
ぼかしを入れたい撮り方をしたかったのですが、終わって見ると案外絞ったほうが良かったのかなと反省です。
これぐらいに背景が少しボケるぐらいがちょうどいいのかもと。
ほぼ試し撮りのショットでしたが、この感じもう少しやってみたかったかもです。
購入経路、リペアや汎用性、購入時の参考
購入時の話については以前のJupiter-9の記事に詳しく書いてあるのでご興味あれば参照ください。
それにしても、いいレンズだと思うのにもうひとつ人気がない感じです。少なくともこのブログのアクセス数では、10位にも上がってきません。
同じロシアンレンズのHelios44はダントツなんですが。。。
eBay一覧でも確かにHeliosよりは少し高いと思いますが、すごくいいレンズだと思うんですが。
なぜに人気がないのでしょう。
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撮影情報
カメラはCanon 5DmarkⅢで、画質はraw非圧縮。
現像ソフトはPhotoshopCC2017 rawで、全体的「露光量」を調整して、ドライフラワーを使ったものは結構ホワイトバランスを整えています。
絞りは開放F2.0〜F8ぐらいまで、シャッター速度は1/100でほぼ固定だったかと。
ISOは絞りのニュアンスを優先で最後に調節用に使ってます。
ホワイトバランスは、今回のレンズはゴーストの影響もあり日陰で撮るようにしたものも多かったので、プリセットの日陰で撮ったものが多いです。
マウント
レンズがM42マウントなので、M42 → Canon EFのこう言った薄いやつです。
自分の買ったのは、もう作ってないようです。1,000円ぐらいだった気もします。
補足
このブログで、人物ポートレートも書いてみることにしました。
光の位置が、写りに質感にかなり影響されるオールドレンズですが、そのクセこそが味として写真に加味できるのがオールドの楽しみ方ではと。その方向で書いていこうと思います。
街撮りでの考察や購入時の話について「繊細なピント面 被写体を優しく浮き上げるボケJupiter-9 85mm」こちらでも書いてあるのでご興味あればぜひ。
“ジュピター9 / Jupiter-9 85mmのポートレート 扱いやすいボケと自然なハレーションが作るフィルム感” のコメント
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jupiter9の人気が芳しくない理由は“しっかりと写りすぎる”ことと“特徴が少ない”ことが関与しているように感じます。他のロシアン無名レンズ達にも当てはまりそうですが…
コーティングの問題でフレアなどは出ますがsonnarコピーなのでボケ味などは現代のレンズと遜色ないと思いますし…。
絞りの形が特徴的だったりしたらもっと人気になっていたかもしれませんね????
確かにHeliosと比べても人気の差がある気がします。いいレンズだと思うんですが。。
とはいえひとつ気になる点がありまして、最近Jupiter-9のリペア販売をしていて感じますが、他のロシアンレンズに比べ内部の作りが雑です。
レンズ構成などの光学系はSonnarから蓄積された技術の素晴らしさがあっての写りと思いますが、内部はHelios44-2やJupiter-8などに比べちょっと簡素化し過ぎではと感じます。
そこからくる個体差を一番感じる銘柄な気がします。
なのでハズレを引く人もいるのではと思っています。
値段もHelios44と比べて少し高いのでそこもその点も人気薄に関係あるかもしれませんね…。
製造数とか製造者のスキルレベルとかが関係してるんですかね…?見た目の違うJupiter9が多い理由も気になります。
倍くらいの値段ですので、ちょっと躊躇するところはあるでしょうね。
部品の簡素化からくる各パーツやネジ穴への負担が上がっている割に、その精度が上がってない感じで、設計の問題のように思えます。あくまで私見ですがー^^