2017 / 05 / 24

Digital Camera

Mir-1Bの40年近く変わらなかった光学設計はどんな写り?37mm F2.8 黒鏡筒 in 浜田山

フレクタゴンの最終バージョンを買ったら、コピーレンズと呼ばれるMir-1の最終バージョンも買うべきだろうと、オールドレンズと呼べるのかどうか微妙ですが92年製造のMir-1Bに挑戦してみました。

レンズとメーカー紹介

M42 VOMZ Mir-1B 37mm F2.8

Carl zeiss jenaの名玉Flektogonのコピーレンズとして有名なロシアンレンズMir-1。
1958年にBrusselsでの万博で賞をとるほど、コピーの域を超えたレンズとして知名度が高いレンズです。

一昨年、その賞をとった初期バージョンを試しましたが、ロシアンレンズらしい飽和感を楽しめるいいレンズでした。
今回はそのまま40年近く作り続けられた黒鏡筒の最終バージョンの92年ものを試します。

ひとつ前の投稿では、コピーもとのFlektogonのやはり最終バージョンも試しましたので、そのFlektogonとも長い時間の変化を比較していきたいと思います。

本日のアジェンダ

・Mir-1の最終バージョン黒鏡筒を試す
・Flektogon 35mmとの違いを考察
・気になる駅、井の頭線浜田山を歩く

ボケ味、フレーム周辺の描写、色味


Flektogon35mmを試したばかりなので、コピーレンズとは言えその違いを直球で感じます。
もう全然違うレンズです。


外観こそMir-1初期のシルバー鏡筒とは違いますが、ほぼ同じような飽和感、ボケかなと。
検索でかかる情報からも、レンズの中身はほとんど変わらず40年以上作り続けられていいたようなので、当然の描写かと思います。
色のりは少し初代シルバー筐体よりいいような気がするでしょうか。


フレクタゴンに比べて明らかに浅く出る暗部は、言い換えると締まりがない描写ですので、締めようとするほうが間違いで、もっと浅く飽和感を強調すべきレンズかと思います。


最短撮影距離は70cmと初代シルバー鏡筒と同じように遠いですので、寄りでボケを期待した描写は無理で、ボカすにしてともやんわりと周辺を和らげる感じかと。


ですので、絞り開放で全体的に柔らかく作る撮り方が一番適しているかと思います。


開放にすると、収差でピント面が少しボケますので、一般的にはよくないものとされる収差ですが、ことMir-1に関しては、全体のボケ味や色のりと相まってロシアンレンズらしい風合いが期待できるかと思います。


ちなみにこちらマクロ・ヘリコイド・マウントを使って寄っています。
中心付近の花が白んでいるのは、四隅の巨大な周辺光量落ちが周りの花のコントラストを上げている効果で、中心部が白んで見えてます。
この辺の癖がオールドレンズの良さであって生かすべき味かと。


こちらはF4.0程度に絞り、少しピント面が安定していますが、やはり周辺光量落ちと奥のボケが相まっていい味が出ているかと。


前ボケは案外素直で、奥の要素の引き立てに使いやすいです。
最短撮影距離が短いレンズはこの撮り方があっているかも。

ピント面の解像度、絞った際のシャープさ、収差

主に絞りF8.0で撮っていまが、少し距離があるものは開放でも撮ってます。


ある程度シャープに出るレンズとは思います。
しかしコントラストがのって来ないと、どうにも引き目の風景は難しいです。


こちらは開放近くで、四隅に周辺光量落ち(ビネット)を使ってコントラストを出していますが、あまり多用すると写真が単調になる気がします。


どことなくSchneiderXenarっぽい描写です。
こういったフレームなら適度なシャープ感と、低いコントラストはちょうどいいかもしれません。


この辺になってくると、もう少しどちらかに振り切れて欲しい印象があります。
暗部が出て締まりがでるか、淡くなって飽和する方へ向かうかといった感じでは。


花の破綻した感じはロシアンレンズっぽくもフレクタゴンっぽくも感じるかと。
暗部も含め、この浅い感じは、これはこれで持ち味としていいのかもと思えて来ました。


開放で少し露出過多に撮っていますが、像面湾曲かなにかでピント面が少しぼやけています。
でもこれでこのレンズはいいんじゃないかと思います。


F8.0に絞るとピント面は少しはっきりして、四隅の周辺光量落ちが改善します。
が、破綻気味だった絞り開放のほうが写真としてはいいんじゃないかと思います。このMir-1の味としては上の開放の写真なのではと思います。


その後も絞ったフレームを試したんですが、やはりどうしてもコントラストが欲しくなります。


ざっくりとしたイメージですが、先ほどの話の暗部が締まらず開放の破綻気味に味が出るレンズはこんな順番ではと。

シルバー鏡筒などの破綻しまくる昔のロシアンレンズ

80〜90年代の少しだけ進化したロシアンレンズ

50〜70年代のカールツアイスなどのドイツ系オールドレンズ。


当然それぞれのレンズに特性がありますが、そもそもソツなくパリッと撮るならどう考えても現代レンズなので、オールドレンズでは表現が偏るほど楽しいかとも思います。

購入経路、リペアや汎用性、購入時の参考

M42 VOMZ Mir-1B 37mm F2.8

1992年製、10枚羽、5群6枚、フィルター径49mm、初代と一緒です。

マウントはM42です。初代バージョンはM39 → M42ステップアップリングなるものをつけないといけませんでしたが、この黒鏡筒はそのままM42でいけます。

ただ、初代バージョンと同じように残念ながら5DmarkⅢだとミラーに干渉します。
ですので今回はα7で出動しました。

falkor0892という106件の取引履歴100% Positive feedbackの業者から購入。
商品説明は欠陥なし! 新品のように、傷、スクラッチ傷、カビのないレンズ。 非常に良い状態! 写真を参照してください。 絞りのうごきはfine、スムーズにピントは動きます。

12枚と多めの掲載の写真からは確かに良さそうなレンズ状態の雰囲気が見てとれました。
届いたものも全く問題ない説明通りのレンズでした。

購入に際して

→ eBay.comのMir-1市場
比較的手頃に状態の良さそうなものも豊富です。
この世代のMir-1は状態がいいものが大量に出回っているようで、eBayで購入するにも比較的安心なレンズかもと思います。

「Grand Prix 1958 Brussels」と刻印が入った初代のシルバー鏡筒はレンズ沼の住人には魅力的ですが、数がかなり少ないようで値段も¥5,000ぐらい高いようなイメージで、状態もいいものは少ないようなので注意して購入したほうがいいかと思います。

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マウントについて

今回のレンズは汎用性の高いM42マウントですが、いかんせん5DmarkⅢではミラー干渉があって使えません。この辺α7シリーズは自由度かなり高く便利です。

 


ですが今回は一般的なM42 → Nex(SONY E)マウントではなく、マクロヘリコイド付きのマウントで寄りの写真も撮っています。
こちらです。

いつのまにか少しヘリコイドが繰り出していて無限遠が合わないで気がつくこともありますが、利便性の高さで中山はこれ一択です。

マウントはカメラによって干渉等でうまく使えないこともありますので、ご自身のカメラでの使用の参考としてください。
また初心者向きの内容で、マウントについての記事を書きました。マウントに疑問点がある方はぜひ。

フレア、ゴースト、ハレーション

前回購入した49mm径のゴム製フードのおかげかハレーションが気になるシーンはなかったかと思います。


強引に太陽に向けたショットでもこのぐらいです。
最終世代のMir-1Bは多少、コーティングが良くなっているのかもしれません。

絞りとシャッター速度の比較

今回投稿の主軸になっている、開放での飽和感を活かした比較写真でちょうどいいものがありました。

絞りF2.0、シャッター速度1/2000、ISO400

絞りが開放で周辺光量落ちがあると、反対に真ん中が明るく見えます。
加えて開放での収差でピント面も少し淡くなった上、そもそも画像周辺のピンは甘くなっているので結果的に全体がソフトな描写になってます。

絞りF8.0、シャッター速度1/1000、ISO800

絞って全体を均一にしてもコントラストが乏しい割に色がのっているので、もうひとつ半端な感じです。
シルバー鏡筒のように色も浅ければフィルム感が出てくるような気がしますが、その特性はないので、やはりこのレンズは開放でのクセに合わせた撮り方をすべきかと。

歩いた辺り

『浜田山』街撮りオススメ度★★★☆☆=3


ゆっくりする急がない週末にはいいかなと思いますが、街撮り・街歩きとしては要素が少ないかなと。


駅からの眺めがほとんど店舗の後ろ側で、ホームから見ると味のある建物が多く「きっとこの反対側には雰囲気のある商店街が、、」と浜田山駅に降り立ちました。


そしたら案外垢抜けた感じで綺麗な通りでした。
ホームから見ると、もっとこってりコントラストがある密集した飲屋街みたいなイメージでしたが、風通りのいいゆったりした通りです。


駅の反対側は道幅も広く低い景観で、いくつもお店が続いていく通りは、休みにぶらぶら歩くのにぴったりな街並みです。


Mir-1の現代版ならやはり後期のフレクタゴンのように、濃淡がありシャープが強い描写になるかなと勇んで来ましたが、ロシアのゆっくりとした時間で変わらずにいたMir-1は、図らずもこの街とぴったりの長閑な雰囲気に適したレンズだったようです。


撮り歩いている時は「バシッとでないなあ」と少し消化不良な感じでしたが、帰って写真を見てみるとこれはこれで良かったんだなとちょっと反省です。


少なくとも試し撮りとしてオールドレンズ持ち出す時は、もっと風にもたれるような感じでそのレンズに身をまかせる必要があるかと。


レンズの特性が分かったら用途に応じて使い分けるべきかなと。
まあ当たり前ですね。
ちょっとここのところ一気にレンズを試し過ぎて、気持ちが先走っていたことを反省した街歩きでした。

撮影カメラ情報

SONY α7

Raw現像

現像はAdobe BridgeCC2017で、レンズの特性を写真に残したいので、調整は露光量で明るさを揃える程度に留めています。

カメラの設定

絞りは開放F2.8〜F8.0ぐらい、シャッター速度は1/1000を基準に絞った時は1/400のぐらい、ISOはオールドレンズのためカメラの露出測定は絞りに応じてかなり曖昧なので撮ってみて合わせる感じです。
ホワイトバランスはほとんど「オート」でした。

補足

一年ほど前に書いたMir-1 シルバー鏡筒の記事がこちらにあります。
ロシアンホワイトの広角 Mir-1 37mm F2.8 はFlektogonコピーでも使い勝手は別物
今回の写真とぜひ比べてみてください。

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